DISCOGRAPHY
解説・増田勇一
YUICHI MASUDA

『CHEAP TRICK/チープ・トリック』(1977)MHCP-1074
エアロスミスとの仕事で知られるジャック・ダグラスのプロデュースによるデビュー作。メジャー契約前から年間250本ものショウをこなしてきた根っからのライヴ・バンドである彼らの、まさにライヴそのままの生々しいサウンドが密封されている。が、日本では評判を呼ぶものの、全米チャートではトップ200にすら入らず。また、当初リック・ニールセンが本作のプロデュースをジョン・レノンに依頼したがっていたとの逸話もある。

『IN COLOR/蒼ざめたハイウェイ』(1977)MHCP-1075
ヘヴィでストレートな前作がアメリカで支持されなかったことを受け、当時のレコード会社側の指示であくまでポップに作られた第2作。それゆえにメンバーたちは未だにこの作品についての不本意さを口にするが、ここにぎっしりと詰め込まれた楽曲たちの質の高さは、本作がこのバンドの日本での認知を広めた事実とともに否定できない。「甘い罠」や「今夜は帰さない」がシングル・ヒットしたのも、あくまで日本だけでのことだった。

『HEAVEN TONIGHT/天国の罠』(1978)MHCP-1076
看板曲のひとつである「サレンダー」で幕を開ける第3作。前年、キッスやフォリナー、ボストンをはじめとするバンドたちのアリーナ公演で前座を務め、のべ100万人以上の観衆の前で演奏してきた事実も功を奏し、本作をもって彼らは初めて全米チャートでトップ50入りを経験。かのELOの前身にあたるザ・ムーヴの楽曲、「カリフォルニア・マン」のカヴァーや、部分的に日本語の歌詞も飛び出す「サヨナラ・グッバイ」も話題に。

『AT BUDOUKAN/at武道館』(1978)MHCP-1077
当時、極端なまでに人気の先行していた日本で、あくまで日本限定でのリリースを想定して録られたライヴ作品。しかしそれが評判を呼んで“輸出”され、米国でも正規発売されることになり、結果的には全米チャート最高4位を記録。彼らにとって初めてのミリオン・セラーとなり、同時に“武道館”の名前は世界共通語となった。何故か未だにどのオリジナル・アルバムにも収録されていない名曲、「ルックアウト」も聴きどころのひとつ。

『DREAM POLICE/ドリーム・ポリス』(1979)MHCP-1078
画期的出世作、『at武道館』の全米リリースが1979年2月に実現したのはバンド側にとって嬉しい誤算だったが、同時にそれは、その時点ですでに録り終えていた4作目のスタジオ・アルバムの発売を大幅に延期せざるを得ない事態をも招いた。が、結果、メンバーたちがシビレをきらした頃に登場した本作は瞬発力をもって世の支持を集め、全米チャートでも最高6位を記録。さらには表題曲と「ヴォイシズ」のシングル・ヒットも誕生した。

『FOUND ALL THE PARTS/デイ・トリッパー』(1980)MHCP-2015
5枚目のスタジオ作品の録音と同時に制作が進められていたのがこの4曲入りミニ・アルバム。当時はエピックがスタートさせた“Nu Disk”シリーズの目玉商品として、10インチのアナログ盤という変則的形態でリリースされた。あからさまな邦題からも明白な通り、ビートルズの「デイ・トリッパー」のカヴァーの他、未発表曲、来日公演で演奏されつつも『at武道館』には収められなかった「キャント・ホールド・オン」も収録されている。

『ALL SHOOK UP/オール・シュック・アップ』(1980)MHCP-1079
『蒼ざめたハイウェイ』から『ドリーム・ポリス』までの3作のプロデュースを担当していたトム・ワーマンと袂を分かち、ビートルズとの仕事であまりにも高名な伝説的人物、ジョージ・マーティンとタッグを組んで制作された意欲作。西インド諸島のモンセラト島で録音され、ロンドンにて完成に至らしめられている。実験性の高さ、各々の楽曲の個性の際立ち方といった意味合いにおいて、まさに最高峰というべき作品のひとつである。

『ONE ON ONE/ワン・オン・ワン』(1982)MHCP-2017
過度の消耗からバンド内に不協和音が響き始め、トム・ピーターソンが脱退。1980年の『JAPAN JAM2』出演はピーター・コミッタを代役に迎えて乗り切ったものの、正式な後任が決まらないまま、リックが大半のベースを弾きながら制作が進められたのが本作。結果、完成間際に迎えられたジョン・ブラントがアルバム・カヴァーにも無事に収まっている。プロデュース担当はクイーンやカーズの作品で知られるロイ・トーマス・ベイカー。

『NEXT POSITION PLEASE/ネクスト・ポジション・プリーズ』(1983)MHCP-2018
トム・ワーマンとの決別以降、伝説的プロデューサーとの実験的作業を重ねてきた彼らは、ついにここで奇才、トッド・ラングレンと合体することになる。全米チャート最高61位という実績は前作にも前々作にも及ばないが、このバンドが元来持ち合わせてきた60年代的エッセンスとポップな側面が見事に引き出された1枚として高く評価する声も多い。実際、本作からたいしたシングル・ヒットが生まれていないという事実は信じ難くもある。

『STANDING ON THE EDGE/スタンディング・オン・ジ・エッジ』(1985)MHCP-2019
前作のセールス不振に苛立ったレコード会社側が持ちかけたのは、外部ライターとの共作と、“初期衝動の奪還”を目的とするジャック・ダグラスの起用。しかしそのダグラスが法的トラブルのため中途離脱し、結果的にはエンジニアのトニー・プラットの手によって完成された作品。まさに表題通りの“崖っぷち”な状況だったが、「トゥナイト・イッツ・ユー」が久々のヒットとなり、アルバム自体も起死回生のトップ40入りを果たしている。

『THE DOCTOR/ザ・ドクター』(1986)MHCP-2020
前作での作業を経て信頼度の増したトニー・プラットを、今度はプロデューサーとして起用。プラットはコンピュータ・プログラミングを得意とする人物で、本作のサウンド・プロダクションにも彼の特性が大いに反映されている。シンディ・ローパーなどにも楽曲を提供している外部作家チームによる「キス・ミー・レッド」以外は全曲オリジナル。高品質な作品であることは言うまでもないが、全米チャートではトップ100入りを逃している。

『LAP OF LUXURY/永遠の愛の炎』(1988)MHCP-2021
実績面での“低迷期”に突入したこのバンドをふたたび表舞台へと引っ張り出したのは、本作でのトムの復帰と「永遠の愛の炎」の全米No.1ヒットだった。が、同曲も含め、外部作家の手による楽曲の占める割合が高い事実と、リッチー・ズィトー(ハートなどの作品でも知られる)による“歌モノ路線”なエッジを欠いた音作りについては、メンバーたちも後悔を口にしている。エルヴィス・プレスリーの「冷たくしないで」のカヴァーも収録。

『BUSTED/バステッド』(1990)MHCP-2022
前作のヒット(全米16位)を受け、ふたたびズィトーとともに制作された1枚。ロッド・スチュワートが気に入って自身で歌いたがったという「フォーリン・イントゥ・ラヴ」が全米12位というヒットになったが、アルバム自体は48位止まり。しかしミック・ジョーンズ(フォリナー)やクリッシー・ハインド(プリテンダーズ)のゲスト参加、「カリフォルニア・マン」の作者であるロイ・ウッドのペンによる楽曲の収録など、特筆すべき点も。

『THE GREATEST HITS/グレイテスト・ヒッツ』(1991)EICP-7055
代表的ヒット曲の数々に加え、ビートルズの「マジカル・ミステリー・ツアー」のカヴァーなども収録されたベスト・アルバム。明らかにトムの復帰と「永遠の愛の炎」のヒットを機に再評価熱が高まったことに応えて登場したもので、当初、日本では2枚組の独自仕様でリリースされていた。ちなみに現在のヴァージョンでも、日本盤には、米国盤には収められていない「今夜は帰さない」(『at武道館』のライヴ音源)が追加収録されている。

『BUDOKAN II/at武道館II』(1993)ESCA-5752 ※
1978年発表の伝説的ライヴ・アルバム、『at武道館』についてメンバーたちが悔やんでいたのは、それを歴史的公演の一部始終を収めた2枚組として発表しなかったこと。そしてこの年に発表されたのが、同作に収めきれなかった“残り半分”に、1979年の公演の音源を3曲追加したというこの作品。しかし結果的には1998年に『at武道館:ザ・コンプリート・コンサート』が登場することで本作の意味合いも薄れてしまうことになるのだが。

『WOKE UP WITH A MONSTER/蒼い衝動』(1994)WPCP-5772 ※
ワーナー・ブラザーズに移籍し、同社の重役でもあったテッド・テンプルマンがプロデュースにあたって制作された4年ぶりのオリジナル・アルバム。外部作家陣の関与もかなり抑えられ、まさにチープ・トリックの真骨頂ともいうべきラウドでポップなロックンロールが楽しめるが、結果的には契約時の重役たちの退陣などの影響もあって充分なプロモーションの後ろ盾を得られず、セールス的には不当に芳しくない結果に終わっている。

『SEX,AMERICA,CHEAP TRICK/セックス、アメリカ、チープ・トリック』(1996)EICP-72~75
デモ音源や未発表曲、別ヴァージョンなどを多数含む“マニアの目にも涙”の4枚組作品。日本では1996年12月に行なわれたジャパン・ツアーに先駆けての来日記念盤としてリリースされている。もちろん代表曲の数々もフィーチュアされてはいるが、40ページに及ぶブックレットに綴られている逸話満載のヒストリーも含め、初心者にはかなり敷居の高い内容。だがリックは「バンドの姿を正直に封じ込めたボックス・セット」だと語っている。

『CHEAP TRICK/チープ・トリック』(1997)VICP-5828
4枚組セットで総括のプロセスを経た4人は、20年前と同じ立ち位置に戻ろうとしたのだろう。ワーナーを離れ、あくまで自分たち主導で音楽を創造できる環境を整備しながら発表されたこの作品が、デビュー作と同様にセルフ・タイトルの作品として登場した事実、そして作品自体に漲っているロック然とした生々しい衝動がそれを物語っている。かつて『ワン・オン・ワン』でエンジニアを務めていたイアン・テイラーとの共同プロデュース。

『PREMIUM BEST/プレミアム・ベスト』(1998)ESCA-7710
ソニー・ミュージックの設立30周年を記念してリリースされた、シリーズもののベスト・アルバム。誰もが知っているヒット曲の数々はもちろん、映画『ローディー』のサウンドトラック用に録られた「エヴリシング・ワークス・イフ・ユー・レット・イット」や、『ワン・オン・ワン』に収録されていた「サタデー・アット・ミッドナイト」の別ヴァージョンなど、当時なりの“初CD化音源”が計3曲収められている事実も見逃せない。

『AT BUDOKAN:THE COMPLETE CONCERT/at武道館:ザ・コンプリート・コンサート』(1998)MHCP-2023~4
『at武道館』の発売20周年を記念してリリースが実現した、まさに表題通りコンプリートな2枚組作品。1978年の武道館公演の曲順どおりにすべての楽曲が並べられ、しかもMCなども完全収録。当時の彼らのライヴが、特定の方向に偏っていない“ありのまま”のカタチで封じ込められている。さらには「サレンダー」と「サヨナラ・グッバイ」のライヴ映像もCDエクストラで追加収録され、全20ページの詳細なブックレットも装備。

『MUSIC FOR HANGOVERS/ミュージック・フォー・ハングオーヴァーズ』(1999)VICP-60626
1998年の4月末から5月にかけ、シカゴのクラブ『メトロ』にて4夜連続の『at武道館』20周年記念ライヴを行なった彼ら。武道館公演の完全再現に始まり、各日、初期3作の全曲を収録順に演奏してみせたが、その際の音源をまとめたのが、この“20年ぶりの新しいライヴ・アルバム”である。同公演で前座を務めたスマッシング・パンプキンズのビリー・コーガンとダーシーもゲストとして乱入。コーガンはライナーノーツまで執筆している。

『AUTHORIZED GREATEST HITS/グレイテスト・ヒッツVol.2』(2000)ESCA-7831
「甘い罠」のライヴ・ヴァージョンで幕を開ける全16曲収録のグレイテスト・ヒッツ。しかしヒット曲ばかりではなく、チャート的には不発に終わった曲や、いわゆる“ヴァージョン違い”なども含まれており、逆にマスト・チューンのいくつかは抜け落ちていたりもする。そこで考えさせられるのが『AUTHORIZED GREATEST HITS』という原題の意味。つまり“本人たちの了解のもとに正当なヒット曲集を作るとこうなる”ということなのか。

『SILVER/シルヴァー』(2001)VICP-61444~5
1999年8月28日、地元ロックフォードにある『デイヴィス・パーク』で行なわれた結成25周年記念ライヴの模様を収めた2枚組ライヴ作品。全29曲、まさにこのバンドの歴史を彩ってきた楽曲たちが所狭しと並び、ビリー・コーガン、スラッシュ、エヴァークリアのアート・アレクサキスといったゲストたちが華を添えている。この計算でいくと2024年には50周年記念ライヴ、その2年後、『ゴールド』発表ということになるはずなのだが。

『SPECIAL ONE/スペシャル・ワン』(2003)VICP-62179
『チープ・トリック』から6年を経ての登場となったオリジナル作品。バンドと共同でプロデュースにあたっているのはシェリル・クロウやスーパー・ファーリー・アニマルズなどの作品を手掛けてきたクリス・ショウ。「俺たちは重苦しいバンドじゃないし、とにかくいい曲、面白い曲だけが詰まった1枚にしたかった」というリックの言葉通り、とにかく楽曲面の充実がすばらしい。しかも日本盤には表題曲の日本語ヴァージョンを特別収録。

『THE ESSENTIAL CHEAP TRICK/エッセンシャル・チープ・トリック』(2004)MHCP-231~2
2004年にリリースされた2枚組ベスト・アルバム。この“エッセンシャル”シリーズは、いわゆるヒット曲集の次元にとどまらない選曲が、レーベルの壁を超えて実現していることでも知られているが、チープ・トリックの場合ももちろん例外ではない。全38曲の収録曲のなかには「蒼い衝動」や、『スペシャル・ワン』からの「セント・オブ・ア・ウーマン」、さらには『セックス、アメリカ、チープ・トリック』からのレアな楽曲まで含まれている。

『ROCKFORD/ロックフォード』(2006)VICP-63423
本稿を書いている時点での最新オリジナル作品にあたるポップでコンパクトな1枚。表題は、言うまでもなくイリノイ州にある彼らの地元の街を指す。第1弾シングルとなった「パーフェクト・ストレンジャー」をリンダ・ペリーが手掛けている他、スティーヴ・アルビニ、クリス・ショウといった名前が共同プロデューサーとしてクレジットされているのは、リックによれば「違う場所で、違う人間と組んで作業をした」結果だという。


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